
従業員が退職したときは、雇用保険だけでなく、社会保険の資格喪失手続きも必要です。資格喪失届は提出期限が短く、資格喪失日や添付書類を間違えやすいため、退職手続きの流れに組み込んでおくことが大切です。
- 資格喪失届に何をどう記入すればよいかわからない
- 提出期限や添付書類に漏れがないか確認したい
- 再雇用時の手続きの扱いを整理したい
この記事では、社会保険の資格喪失届の基本から、書き方、提出方法、資格確認書等の回収、同日得喪までを実務目線で解説します。退職手続きを落ち着いて進めるための確認材料としてお役立てください。

社会保険の資格喪失届とは?提出が必要になるケース

資格喪失届は、従業員が社会保険の対象でなくなったときに提出する届出
社会保険の資格喪失届とは、正式には「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」といいます。
従業員が退職、死亡、契約変更などにより健康保険・厚生年金保険の被保険者でなくなったとき、事業主が日本年金機構へ提出する手続きです。従業員本人が直接提出するものではなく、会社側が退職手続きの一環として対応します。
提出が必要になる主なケース
資格喪失届は、退職時だけに提出するものではありません。主なケースは次のとおりです。
| ケース | 資格喪失日の考え方 |
|---|---|
| 退職した場合 | 退職日の翌日 |
| 死亡した場合 | 死亡日の翌日 |
| 75歳に到達した場合 | 75歳の誕生日当日 |
| 雇用契約の変更で適用要件を満たさなくなった場合 | 雇用契約変更の当日 |
| 転勤により別の適用事業所へ移る場合 | 転勤の当日 |
特に間違いやすいのは、退職時の資格喪失日です。たとえば、3月31日に退職した場合、資格喪失日は3月31日ではなく、4月1日です。退職日と資格喪失日を混同しないよう、退職届や雇用契約終了日を確認しながら処理しましょう。
資格取得届との違い
資格取得届は、従業員を採用したときに社会保険へ加入させるための手続きです。一方、資格喪失届は、退職などにより社会保険の資格を失うときの手続きです。
採用時の社会保険手続きを確認したい方は、資格取得届の記事もあわせてご覧ください。

入社と退職の手続きは別々に見えますが、実務では一連の労務管理です。採用時・退職時の手続きをセットで整理しておくと、担当者の負担を減らしやすくなります。
資格喪失届の書き方・記入項目
様式は日本年金機構のホームページから入手できる
資格喪失届の様式は、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。電子申請を利用する場合は、e-Govや事業所向けオンラインサービスなどを通じて手続きできます。
(e-Govはこちらのリンクを、事業所向けオンラインサービスはこちらのリンクで詳しい説明が確認できます)。
紙で提出する場合は、事業所整理記号や被保険者整理番号を、社内で管理している情報と照合しながら記入しましょう。
主な記入項目
資格喪失届では、主に次の項目を記入します。
- 事業所整理記号
- 事業所番号
- 被保険者整理番号
- 被保険者の氏名・生年月日
- 個人番号または基礎年金番号
- 資格喪失年月日
- 喪失原因
- 70歳以上被用者に関する該当欄
死亡による資格喪失の場合は、個人番号ではなく基礎年金番号を記入する取り扱いがあります。従業員の状況によって記入方法が変わるため、最新の記入例を確認しながら進めましょう。
喪失原因と間違いやすいポイント
喪失原因は、退職等、死亡、75歳到達、障害認定、社会保障協定など、資格喪失の理由に応じて記入します。
退職の場合は「退職等」、死亡の場合は「死亡」、75歳に到達して後期高齢者医療制度へ移行する場合は「75歳到達」を選びます。
ここで重要なのは、退職時の資格喪失年月日は退職日の翌日という点です。たとえば、4月30日退職の場合、資格喪失年月日は5月1日です。70歳以上被用者が退職・死亡により不該当となる場合は、「70歳以上被用者不該当」に関する欄も確認しましょう。
提出期限・提出先・提出方法
提出期限は事実発生から5日以内
資格喪失届の提出期限は、事実発生から5日以内です。退職や死亡、契約変更など、資格喪失の原因となる事実が発生したら、できるだけ早めに準備します。
年度末や繁忙期など退職者が多い時期は、退職日が確定した段階で、必要情報や回収物を前倒しで整理しておくと安心です。
提出先と提出方法
資格喪失届の提出先は、事務センターまたは管轄の年金事務所です。健康保険組合に加入している事業所では、年金事務所への届出とは別に、健康保険組合への手続きが必要になる場合があります。
提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参から選べます。退職者が多い会社や入退社が頻繁に発生する会社では、電子申請を活用すると、郵送や窓口持参の手間を減らしやすくなります。
提出が遅れた場合に起こり得ること
資格喪失届の提出が遅れると、保険料の精算や退職者の健康保険切り替えに影響することがあります。
退職者が国民健康保険へ切り替える場合や、任意継続を検討する場合、会社側の手続き状況について問い合わせが入ることもあります。提出期限を守ることは、会社の事務処理だけでなく、退職する従業員が次の生活にスムーズに移るための配慮でもあります。
添付書類と従業員から回収・返却するもの/再雇用時の注意点
2026年時点では資格確認書等の回収を確認する
2026年時点では、従来の健康保険証の有効期限は7月に終了することが発表されており、医療機関ではマイナ保険証または資格確認書を使う制度になっています。
協会けんぽの被保険者については、退職により健康保険の資格を喪失する場合、交付されていた本人・家族分の資格確認書、高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証、限度額適用・標準負担額減額認定証などを、事業主へ返納しなければなりません。事業主は、回収した資格確認書等を資格喪失届に添付して日本年金機構へ提出します。
マイナ保険証(マイナンバーカード)は、会社が回収する必要はありません。会社が確認すべきなのは、退職者本人や被扶養者に交付されている資格確認書(紙の健康保険証・資格確認書)があるかどうかです。
回収できない場合は回収不能届を添付する
資格確認書などを紛失している、退職者と連絡が取れないなどの理由で回収できない場合は、「健康保険 資格確認書回収不能届」の提出が必要になることがあります。
回収できないままにせず、いつ、どのように返却を依頼したかを社内で記録しておくと、後日の確認に対応しやすくなります。退職時のチェックリストには、貸与物の返却とあわせて、資格確認書等の有無も入れておきましょう。
雇用保険の資格喪失手続きとは別に進める
社会保険の資格喪失届と、雇用保険の資格喪失手続きは別の手続きです。社会保険の資格喪失届は日本年金機構へ提出しますが、雇用保険の資格喪失届や離職票に関する手続きは、ハローワークで行います。
提出先も様式も異なるため、退職手続きの一覧表で分けて管理すると漏れを防ぎやすくなります。
退職者へ案内しておきたい健康保険の選択肢
退職後の健康保険には、国民健康保険へ加入する、協会けんぽなどの任意継続を利用する、家族の健康保険の被扶養者になる、という選択肢があります。
どの方法が合うかは退職者本人の状況によって異なります。会社が一方的に判断するのではなく、市区町村、協会けんぽ、家族の勤務先などに確認できるよう、中立的に案内するとよいでしょう。
60歳以上の再雇用では同日得喪を確認する
60歳以上の従業員が退職後、1日の空白もなく同じ会社に継続して再雇用される場合、資格喪失届と資格取得届を同時に提出する「同日得喪」の取り扱いが可能です。これは定年退職に限らず、嘱託への切り替えや有期契約での再雇用など、60歳以上の方が退職後に継続再雇用される場合に対象となり得ます。
同日得喪を行うと、再雇用された月から、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に決定することができます。
添付書類としては、退職したことがわかる就業規則や退職辞令の写し、継続して再雇用されたことがわかる雇用契約書や労働条件通知書、または「退職日」と「再雇用された日」が記載された事業主の証明書が求められます。
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資格喪失届は、退職者の次の生活にも関わる手続きです。だからこそ、単に書類を出すだけでなく、退職時の案内や社内フローまで含めて整えることが大切です。
まとめ
社会保険の資格喪失届は、従業員が退職、死亡、75歳到達、契約変更などにより健康保険・厚生年金保険の資格を失うときに、事業主が提出する届出です。
提出期限は事実発生から5日以内で、提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所です。提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参から選べます。
実務で特に注意したいのは、資格喪失日の考え方です。退職の場合は退職日の翌日、死亡の場合は死亡日の翌日、75歳到達の場合は75歳の誕生日当日となります。
また、2026年時点では、従来の健康保険証ではなく、資格確認書等の回収・返却状況を確認する必要があります。回収できない場合は、「健康保険 資格確認書回収不能届」の提出も検討します。
資格喪失届は、退職のたびに発生する手続きです。担当者の経験だけに頼るのではなく、チェックリスト化し、資格取得届、雇用保険、給与計算、退職者への案内まで一連の流れで管理すると、処理漏れを防ぎやすくなります。
退職手続きや社会保険手続きを整理したい方は、関連する実務記事もあわせて確認すると、入退社対応の全体像をつかみやすくなります。





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社会保険の資格喪失届は、退職のたびに発生する大切な手続きです。提出期限、資格喪失日、資格確認書等の回収、雇用保険との違い、再雇用時の同日得喪など、確認すべき項目は少なくありません。
合同経営グループでは、社会保険手続き、雇用保険手続き、給与計算、労務相談まで、企業の状況に合わせてご相談を承っています。
参照元
日本年金機構:「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」

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