【お役立ち情報】残業・休日出勤の申請について

◆ こんなお悩み、ありませんか?

「残業は事前申請制にしているのに、申請を出さない社員がいる」
「事後にまとめて申請されるので、勤怠管理が追いつかない」
「無断で残業している社員の申請を認めたくない」

こうした相談を顧問先からよくいただきます。勤怠管理システムの整備や時間外労働の制限が進む中で、「申請ルールの形骸化」は多くの企業が直面する可能性のある課題です。

◆ 「無許可の残業=労働時間ではない」は誤りです

まず押さえておきたいのは、
「無許可の残業=労働時間ではない」という考え方は法的に通用しないという点です。

労働基準法では、「使用者の指揮命令下にある時間」を労働時間と定義しています。
この“指揮命令下”の範囲は広く、次のようなケースでも労働時間とみなされる可能性があります。

  • 与えられた業務が所定労働時間内に終わらず、やむを得ず残業した場合
  • 上長が残業している事実を知りながら黙認していた場合

したがって、申請が遅れた・許可していないからといって残業代を支払わない運用は、賃金未払い(労働基準法第24条違反)にあたるリスクがあります。

◆ 「○日以内の事後申請」ルールは設定可能です

とはいえ、申請が遅れる社員を放置することは勤怠管理の形骸化につながります。
そのため、「申請期限を明確に定める」ことは法律上も問題なく、有効な対応策です。

たとえば次のようなルールを設けることも可能です。

  • 残業・休日出勤は原則「事前申請・上長承認制」とする
  • やむを得ず事後となる場合は、○日以内に申請すること
  • 期限を過ぎての申請は原則認めない(ただし、上長がやむを得ないと認めた場合を除く)

このようなルールは就業規則に明記し、全社員への周知期間(例:1か月)を設けたうえで運用を開始するのが望ましいでしょう。

◆ 注意:ルール違反でも賃金不払いはNG

ここで注意すべきは、
「ルールに反した申請は認めない=残業代を支払わない」という運用はリスクが非常に高いという点です。

たとえ申請が遅れていても、実際に労働が行われ、上長が黙認していた場合には、企業には残業代支払義務が発生します。

そのため、対応としては以下のように整理するのが現実的です。

  1. ルールを明確化し、社員に周知する
  2. 期限を守らない場合は「勤務態度上の指導対象」とする
  3. それでも改善が見られない場合は、「業務命令違反」として懲戒処分を検討する

「賃金の不払いではなく、勤務態度への是正」という方向性がポイントです。

◆ 実務での導入ステップ例

  1. ルール明文化
     → 就業規則に「事前申請原則・事後○日以内」ルールを追加
  2. 社員説明会の実施
     → 管理職・一般社員にルールと背景を説明
  3. 移行期間の設定
     → 約1か月の移行期間を設け、定着を図る
  4. 指導の記録化
     → 違反があった場合は指導記録を残し、再発防止を徹底

◆ まとめ:ルールの明確化で「残業管理の属人化」から脱却を

残業申請の遅れや無断残業は、企業の管理責任が問われるリスクをはらんでいます。
しかし一方で、ルールの整備と運用の工夫によって、社員の労働時間を公正かつ透明に管理する体制を築くことが可能です。

「残業・休日出勤の事前申請制」を有効に機能させるために、今一度、社内ルールの見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

💡ポイントまとめ

  • 無許可残業も「労働時間」に該当する場合がある
  • 申請ルールは明文化・周知が重要
  • 違反者への対応は「賃金不払い」ではなく「勤務態度の是正」で

私たち社労士法人合同経営では、人事労務に関するサポートを行っています。
ぜひ、お気軽にご相談ください。

合同経営では、定期的にお役立ち情報を皆様にお届けしております。公式LINEにて最新情報をご提供しますので、ぜひ友達登録をお願いします。

目次