【お役立ち情報】社員の身だしなみ(華美な髪色・ネイル、アクセサリー、タトゥーなど)について

企業イメージを守るためにも、あまりにも不適切な身だしなみをしている社員に改善を求める場面があります。しかし、その際に 注意すべき点は何かそもそも注意すべきなのか など、判断に迷う経営者や人事担当者も少なくありません。
本記事では、身だしなみに関する指導を行う際に押さえておくべきポイントをまとめます。

1.はじめに確認すべきこと

髪色やネイル、アクセサリー、タトゥー等に関する制限を設ける場合は、就業規則に明記する必要があります。規定がない状態で注意すると「恣意的指導」と受け取られ、不当な扱いだと主張されるリスクがあります。

◆注意や指導を行うには、業務上の合理性が不可欠です。
例:「顧客に与える印象」、「安全衛生上の支障(アクセサリーが機械に引っかかる等)」

◆ルール策定にあたっては差別的な扱いを避けることが大切です。「男性は不可・女性は可」といった性別や年齢による偏った基準はトラブルの原因になります。

2.指導の流れ(ステップ)

事前準備
就業規則や社内ルールに基づく基準を確認します。指導の目的(顧客対応のため、安全確保のため等)を整理し、関連する規定や資料があれば手元に用意しましょう。

個別に呼び出して注意する
プライバシーに配慮し、周囲に聞こえない場所で行います。落ち着いた口調で、相手の尊厳を損なわない伝え方を心がけましょう。

事実の確認
「最近、髪色やネイルの件で気になる点がある」と切り出し、本人の意見や理由を確認します。一方的に注意するのではなく、まず相手の言い分を受け止めることで納得感を持たせられます。

会社の立場・ルールを説明
「当社のルールでは派手な髪色・ネイルは顧客対応に支障が出るため控えることになっています」と伝えましょう。合理的理由を合わせて説明すると説得力が増します。

改善のお願い
「次回の勤務日までに直していただきたい」といった期限を具体的に示します。必要に応じて「この程度であれば問題ない」という許容範囲を提示するのも有効です。

フォローアップ
一貫した基準で確認を続けます。改善が見られない場合は「注意 → 指導 → 懲戒」と段階的に対応を進めることが望まれます。

3.指導の際に気を付けること

個別の事情を尊重する
宗教的・文化的背景や病気療養上の理由がある場合には、柔軟な配慮が必要です。

プライバシーを守る
公衆の面前で注意すると、パワーハラスメンと受け取られるリスクがあります。必ず個別に指導を行いましょう。

一貫性を保つ
全従業員に同じ基準を適用することが大切です。特定の人だけを厳しく注意すると、不公平感を招き職場の信頼関係を損ないます。

4.業務上の合理性(外見規制の根拠)

身だしなみルールを定める際には、業務上の合理性を明確にすることが必要です。以下に考えられる例を挙げます。

顧客対応・会社イメージ

  • 信頼性の確保⇒保険・金融・法律・教育・医療などでは、派手な髪色や目立つタトゥーが信頼を損なう可能性があります。
  • 取引先・顧客の慣行に配慮⇒保守的な業界・地域では拒否感や不安を招く恐れがあります。
  • ブランドイメージとの整合性⇒統一感ある外見を重視する会社では、過度な自由がブランド戦略に反する場合があります。

安全衛生

  • 機械・装置操作時の危険⇒アクセサリーが引っかかる、ネイルが折れてケガにつながる可能性があります。
  • 衛生管理上のリスク⇒飲食・医療・介護・保育の現場では異物混入・細菌付着の原因になり得ます。

業務効率

  • 作業効率の低下⇒長すぎる爪や大ぶりのアクセサリーはPC操作や作業効率を阻害します。
  • 動作の制約⇒大きなアクセサリーや指輪が業務の動きを妨げることがあります。

職場環境・秩序

  • 公平性・一体感⇒ルール遵守に差があると不公平感やモチベーション低下を招きます。
  • 苦情・不快感の防止⇒顧客や同僚から「不快」「不適切」といった苦情が寄せられる場合があります。特にタトゥーは日本社会で依然として否定的に見られるケースが多いため注意が必要です。
  • 企業文化との整合性⇒誠実さや清潔感を重視する文化と極端な外見は相容れません。
  • 公序良俗・社会的責任⇒攻撃的・差別的なデザインのアクセサリーやタトゥーは制限が可能です。

まとめ

従業員の身だしなみを指導する際は、①就業規則に明文化、②業務上の合理性を明確化、③個別事情への配慮、④プライバシー保護、⑤一貫した基準運用の5点が特に重要です。
指導の目的は「社員を縛ること」ではなく、顧客からの信頼を守り、安全で働きやすい職場を維持することにあります。経営者・人事担当者は、ルールを押し付けるのではなく、社員が納得しやすい形で説明し、共通理解をつくる姿勢を大切にしてください。


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